食事性グルコシルセラミドの機能性(皮膚バリア機能に及ぼす効果③)

培養細胞を用いた研究-1

培養細胞、3次元ヒト皮膚モデル細胞を用いた研究からグルコシルセラミドの代謝産物であるスフィンゴイド塩基がセラミド合成系へ影響を与えているのに加え、細胞内代謝に影響を与えているペルオキシゾーム増殖剤応答受容体の発現に関与するmRNA および 長鎖脂肪酸の合成にも影響を与えている炭素鎖伸長酵素の発現に関与するmRNAも増加しているという結果が得られています。

これにより角化細胞(ケラチノサイト)の分化が促進され、ダメージを受けた皮膚の回復が早くなるのではないかと考えられています。

グルコシルセラミドは、スフィンゴ糖脂質の一種で、セラミドとグルコースが結合した構造を持ちます。この分子は、動物や植物、微生物などのさまざまな生物において、細胞膜の成分やシグナル伝達の役割を担っています。特に皮膚の角層では、セラミドの前駆体として、表皮透過バリアの形成に関与しています。

培養細胞を用いた研究では、グルコシルセラミドの代謝産物であるスフィンゴイド塩基が、セラミド合成系に影響を与えることが示されています。
スフィンゴイド塩基は、セラミド合成酵素の発現や活性を調節することで、セラミドの量や種類を変化させる可能性があります。
また、スフィンゴイド塩基は、細胞内代謝に影響を与えるペルオキシゾーム増殖剤応答受容体(PPAR)や炭素鎖伸長酵素(ELOVL)の発現も増加させることが報告されています。
これらの因子は、皮膚バリア機能に関係する脂質の合成や分解に重要な役割を果たしていると考えられています。

グルコシルセラミドの培養細胞を用いた研究は、皮膚バリア機能の分子機序の解明に貢献しています。
ただし、培養細胞では皮膚全体の構造や機能を再現することは難しいため、動物実験や臨床試験などのさらなる研究が必要です。

【角化細胞(ケラチノサイト)】

表皮の大部分を占める細胞で、角化という特殊な分化を示す細胞です。
分化、分裂を繰り返しながら表層(表皮)に向かい最終的には角質として剥がれ落ち表皮の新陳代謝を担っています。

培養細胞の応用と役割

培養細胞は、生命現象の解析や物質の生産など、幅広い応用領域で重要な役割を果たしています。これらの細胞は、多細胞生物から取り出され、体外で増殖や維持が可能です。さまざまな種類の培養細胞が存在し、それぞれに特定の培養条件や培地の組成が求められます。

角化細胞の培養と研究の有用性

特に、角化細胞(ケラチノサイト)は、皮膚や粘膜などで見られ、バリア機能や免疫応答などに重要な役割を果たしています。このような角化細胞を培養することは、皮膚疾患の研究や創傷治癒において非常に有用です。培養細胞を用いた実験や解析は、生物学的なメカニズムの解明や治療法の開発につながる可能性があります。

培養細胞研究の制約と展望

ただし、培養細胞を用いた研究には制約もあります。培養細胞は体内の環境を再現することは難しく、実際の組織や臓器の複雑な構造や機能を完全に再現することはできません。そのため、動物実験や臨床試験など、より実際の状態に近い環境での研究も必要とされています。それにもかかわらず、培養細胞を用いた研究は、私たちの生命科学の理解を深めるために重要な手法となっています。

引用:明治大学農学部研究報告

監修

江口  文陽
江口  文陽教授
1965年群馬県生まれ、東京農業大学大学院農学研究科博士後期課程修了(博士)、日本学術振興会特別研究員、東京農業大学非常勤講師、高崎健康福祉大学助教授、教授を経て2012年4月東京農業大学教授。同大学院指導教授、2021年4月より東京農業大学学長に就任

出身学校
1984年04月 - 1988年03月 東京農業大学 農学部 林学科(林産学コース) 卒業

取得学位
東京農業大学 - 博士(林学)

学内職務経歴
2012年04月 - 継続中 東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 教授
2016年04月 - 継続中 東京農業大学 (その他の組織) 東京農業大学「食と農」の博物館 館長
2021年04月 - 継続中 東京農業大学 学長

所属学会・委員会 等
1985年04月 - 継続中 日本木材学会
1988年06月 - 継続中 日本きのこ学会
1995年04月 - 継続中 日本炎症再生医学会
1995年04月 - 継続中 日本農芸化学会
1995年05月 - 継続中 応用薬理研究会